不用品回収

「それは、まだ使うから」

物置になった和室の襖を開けて、いちばん手前の段ボールを引き出したところで、後ろから声がかかる。

「それは、まだ使うから」

中身は20年前のカタログと、割れたままの湯呑みでした。反論しかけて、やめる。ここで押し切ると、来年の帰省では和室に入れてもらえなくなります。

実家の片付けで手が止まるのは、物が多いからではありません。判断する権利が自分にないからです。

進まないのは、量のせいではない

帰省のたびに「今度こそ」と思って、毎回半分も進まない。理由は3つに分けられます。

家の持ち主は親です。子から見て明らかなゴミでも、親にとっては「まだ使えるもの」であり、その判断を覆す権利は子にはありません。黙って捨てたことが一度でも見つかると、次から段ボールに手を触れさせてもらえなくなります。物量の問題より先に、この関係を壊さないことが条件になります。

次に、時間が絶対的に足りません。数十年ぶんの蓄積に対して、こちらの持ち時間は2日か3日です。全部やろうとして、どこから手をつけるかで一日が終わる。これが二度目、三度目の帰省でも繰り返されます。

そして、兄弟がいる場合は誰が何を決めるかが決まっていません。仏壇、写真、通帳、土地の書類。判断を保留にしたまま手を止めた物が、次の帰省でもそのまま置いてあります。

帰省中に終わることと、終わらないこと

先に線を引きます。3日で終わる作業と、終わらない作業を混ぜると、どちらも中途半端になります。

帰省中に終わること次回か業者に回すこと
冷蔵庫と食品棚の期限切れ処分タンス・食器棚・ベッドなどの大型家具
チラシ・新聞・空き箱・紙袋の処分エアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機の4品目
玄関から各部屋への通路の確保写真・手紙・記念品の選別
危険物がどこに何本あるかの把握通帳・権利書・保険証券の整理
家全体を部屋ごとに写真で記録押入れの奥・天袋の中身
自治体の粗大ゴミのルールを調べる庭の物置と、その中身

左側は親の同意が取りやすく、判断に時間がかからず、成果が目に見えます。右側は同意も判断も時間がかかるうえ、量が多くて一度の帰省では終わりません。

左側だけを完走して帰る。これが結果的にいちばん早く進みます。通路が空いて冷蔵庫が片付くと、親のほうから「あれも要らないかも」と言い出すことがあります。

現地にいるうちに調べておくこと

粗大ゴミの出し方は自治体ごとに違います。申し込みが電話だけの市もあれば、ネット完結の市もある。処理券をどこで買えるか、クリーンセンターへ自分で持ち込めるか、持ち込みは土曜も受け付けているか。

調べること自体は自宅からでもできますが、処理券を売っている店の場所と、持ち込み先までの道のりは、現地にいるうちに一度確かめておくと次回が速くなります。粗大ゴミの申し込みから収集までは1〜2週間かかることが多く、帰省中に申し込んで、収集は親に立ち会ってもらう形も取れます。

出し方の全体像は粗大ゴミの出し方と回収業者の比較に、家電4品目の扱いは家電の捨て方にまとめています。

見つけたら、その場で手を止めるもの

古い家には、そのまま袋に入れてはいけないものが必ず出てきます。処分まで手が回らなくても、どこに何本あるかを把握するだけで価値があります。

このうち灯油と農薬と消火器は、親も処分方法を知らずに置いていることが多いものです。「捨てられなくて困っていた」と言われることがあります。

兄弟で先に決めておく2つのこと

決めるのは、片付けを始める前です。作業中に電話で相談し始めると、その日の作業はそこで止まります。

ひとつは、窓口を1人に決めること。親の意思がいちばん上にあるのは変わりませんが、業者への連絡や日程の調整を全員でやると話が食い違います。実家に近い人か、時間が取れる人が担当し、他は判断が要るときだけ呼ばれる形にします。

もうひとつは、費用の出し方です。誰がいくら出すのかを、金額が発生する前に決めておきます。片付けが終わってから請求書を回すと、金額そのものより「聞いていない」でこじれます。親が出すのか、子で分けるのか、家財の売却分を充てるのか。ここまで話しておくと、業者の見積もりを取る段階で止まりません。

業者に任せた場合の費用

自分たちの手に負えない量なら、まとめて業者に頼む選択肢があります。金額は間取りと物量で決まり、1R・1Kで3万〜10万円ほど、3DK・3LDK以上の一軒家になると20万〜50万円以上を見ておきます。

同じ間取りでも、通路が空いていて分別が済んでいる家と、床が見えない家では作業人数と時間が変わります。帰省中に通路を空けて明らかなゴミを減らしておくと、そのぶん見積もりが下がります。

間取り別の相場と業者の選び方はゴミ屋敷の片付け費用に詳しくまとめています。悪質な業者の見分け方は無料回収の注意点を先に読んでおいてください。

よくある質問

Q親が捨てるのを嫌がって話が進みません
A
「捨てる」から入ると身構えられます。使えるかどうかではなく「今も使っているか」を一緒に確認する形にすると、判断が本人の側に残るぶん進みやすくなります。それでも渋る物は保留の箱にまとめ、その箱を次の帰省まで開けなければ手放す、という決め方もあります。
Q遺品整理とは違うのですか
A
違います。遺品整理は亡くなったあとに相続人が行うもので、実家の片付けは親が存命のうちに本人の同意を得て進めるものです。業者のサービス名も分かれていることが多いので、依頼するときは現状を伝えてください。
Q帰省の何日前から準備すればいいですか
A
帰省の1〜2週間前に、粗大ゴミの申し込み方法と収集日だけ確認しておくと、滞在中に申し込みまで進められます。ゴミ袋と軍手とマスク、それに古い家なら虫除けを持って行くと、現地で買い出しに出る時間が減ります。
Q帰省中に業者を呼べますか
A
見積もりだけなら数日で来てもらえることが多く、作業日を後日にして親に立ち会ってもらう形が取れます。ただしお盆の時期は予約が埋まりやすいので、帰省が決まった時点で連絡しておくほうが確実です。
この記事のまとめ
  • 進まないのは量ではなく、判断する権利が親の側にあるから。黙って捨てると次の帰省で手を触れられなくなる
  • 3日で終わる作業と終わらない作業を先に分け、終わる側だけを完走して帰る
  • 帰省中にしかできないのは、危険物の把握と、自治体のルールと持ち込み先の確認
  • 兄弟がいるなら、窓口を1人に決めることと費用の出し方を、始める前に決める
  • 業者に任せると1R・1Kで3万〜10万円、3DK以上の一軒家で20万〜50万円以上が目安