ふすまを開けた瞬間の、あの匂い
久しぶりに押入れのふすまを開けたら、むっとした空気と一緒にあの匂いがして、懐中電灯で照らした奥の壁に白いふわふわしたものが点々と出ていた。去年も同じ場所に出て、ちゃんと拭いたはずなのに、と思いますよね。
押入れのカビが同じ場所に戻るのは、取り方が悪いからではありません。カビが増えるのに要る条件が、押入れの中に残ったままだからです。取る作業と、条件を崩す作業は別物で、片方だけやっても翌年また会うことになります。
いちばん冷たい場所からぬれる
同じ押入れでも、カビは均等には出ません。奥の壁の下のほう、床板と壁がぶつかる隅、すのこの裏側。決まった場所に集まります。
押入れの壁の向こうが外壁だったり、日の当たらない北面だったりすると、その面だけ温度が下がります。湿った空気は冷たい面に触れると水滴になります。これが結露で、札幌市も、押入れの中や家具の裏のように空気の流れが悪く冷えやすい場所は結露しやすいとしています。押入れの中でいちばん冷たい場所が、いちばん先にぬれます。
懐中電灯を持って、まず次の4か所を見てください。手前だけ拭いて終わりにすると、翌週また匂いが戻ります。
- 奥の壁の、床に近い下のほう
- 床板と壁がぶつかる四隅
- すのこを上げた裏側と、その下の床板
- 床に直置きした段ボールと衣装ケースの底
夏の押入れで、温度と湿度と栄養がそろう
カビが増えるには温度と湿度と栄養が要ります。夏の押入れは、その3つが同時にそろいやすくなります。
- 温度 花王によると15〜30℃ほどで増え、25〜28℃が最も育ちやすいとされます。夏の室温がそのまま当てはまります
- 湿度 花王は60%以上で活発になり80%以上で一気に増える、札幌市は70%以上を好むとしています。閉め切った押入れは空気が動かず、湿気がこもります
- 栄養 ホコリ、食べかす、髪の毛、ダニなど、あらゆるものが栄養になります。掃除機で吸ってもゼロにはなりません
3つのうち温度は季節に任せるしかなく、栄養も完全には消せません。こちらで動かせるのは湿度です。押入れのカビ対策が結局のところ湿気の話になるのは、そのためです。
塩素系は持ち込まない。ふき取ってからエタノール
浴室のカビと同じつもりで塩素系漂白剤を持ち込むのはやめておきましょう。花王も、場所によって塩素系が使えないとしています。押入れで使うのはエタノールです。ただし札幌市は、カビ取り剤だけでなく消毒用アルコールでも、薬剤によって壁紙などが変色することがあるとしています。木や壁紙に使う前に、目立たない所で試してください。
- 窓と部屋の扉を開けてから、マスクとゴム手袋をつける
- 布団、衣装ケース、段ボールを全部出す
- エタノールを、目立たない所に少しだけ当てて、変色しないかを確かめる
- 乾いたまま触らない 札幌市は、いきなり乾いた雑巾でふく、掃除機をかける、スプレーの薬剤を吹きかける、のどれもカビの胞子を飛び散らせるとしています。掃除機も、この時点ではかけません
- まず、固く絞った布でカビを静かにふき取る。布は面を替えながら使い、洗って再利用しません
- そのあと、無水エタノールと水を8対2で混ぜたスプレー(または消毒用エタノール)を布に含ませて当てるか、近くから吹き、15分ほど置いてから乾いた布でふく
- 風を通して乾かす。完全に乾くまで物を戻さない
- 乾いてから、床板とすのこのホコリを掃除機で取る。カビが残っている所には掃除機を当てない(胞子が飛び散ります)
エタノールで除菌はできても、黒カビの色までは落ちないと健栄製薬は書いています。札幌市も、薬剤で完全に除去できないことがあるとしています。乾いたあとに同じ場所からまた広がってくるなら、下の「表面処理では戻らないとき」を見てください。
押入れのカビ、3つの案内の数字と手順を並べると
| 比べるところ | 札幌市 | 花王 | 健栄製薬 | このページの決め方 |
|---|---|---|---|---|
| 増える湿度 | 70%以上 | 60%以上で活発、80%以上で一気に | ― | 低いほうの60%を超えないようにする |
| 増える温度 | 20〜25℃ | 15〜30℃、25〜28℃が最も育つ | ― | 夏はずっと条件に入ると考える |
| 最初の一手 | 固く絞った雑巾で静かにふき取る。いきなりスプレーしない | 荷物を出して汚れを取ってから除菌 | エタノールのスプレーを吹いて15分ほど置く | 札幌市と花王に合わせ、ふき取ってからエタノール。スプレーは胞子を飛ばさないよう布に含ませるか近くから |
| 使う薬剤 | カビ取り剤や消毒用アルコール。どちらも壁紙などが変色することがある | 場所によって塩素系が使えない | エタノールなら市販のカビ取り剤が使えない畳にも | 塩素系は使わずエタノール。アルコールでも変色することがあるので、目立たない所で試してから |
| 再発を防ぐ | すのこ、家具と壁のすき間、除湿剤、風通し | 詰め込みすぎない、乾かしてからしまう | ― | 3つとも「空気を動かす」ことが中心 |
| 手に負えないとき | 被害がひどければ専門業者に | ― | ― | 広い範囲や、すぐ戻るときは業者か建物の点検へ |
出したものにカビが移っていないか
押入れを掃除しても、しまってあった側にカビが残っていれば、戻した時点で持ち込むことになります。全部出したこの機会に、明るい場所で確認してください。
- 布団と毛布 白い粉のようなものが付いていたら、屋外ではたいてから天日に干します。匂いが取れなければクリーニングへ
- 段ボール 底面が湿気を吸っています。カビが出ていなくても、押入れに段ボールを戻さないほうが次の年が楽です
- 衣装ケース 蓋の内側と底に結露の跡が出ます。中身を出して拭き、完全に乾かしてから使います
- 革製品とスーツ 白いカビが付きやすいものです。乾いた布で払ってから陰干しし、押入れではなく風の通る場所へ移します
押入れを乾いた状態に保つ
カビを拭き取っても、温度と湿度と栄養はそのまま残っています。翌年また同じ場所に出るかどうかは、このあと押入れをどう使うかで変わります。
- 詰め込みすぎない すき間がないと空気が動きません。花王も、ぎゅうぎゅうにしまわないよう勧めています。壁からも少し離して置きます
- すのこを床と奥の壁の両方に 札幌市も押入れにすのこを置くよう勧めています。床だけに敷いて満足しがちですが、壁側の一枚も効きます
- ときどきふすまを開けて風を通す 天気のよい日に開け放ち、扇風機を回すと空気が入れ替わります
- 除湿剤を置く 札幌市は、押入れのような狭い場所には市販の除湿剤が有効だとしています。ぬれるのが下からなら、置く場所も下です。満水になったら替えます
- 布団は起きてすぐしまわない 寝ている間の汗で布団は湿っています。その水分を押入れに閉じ込めることになります
クローゼットで気をつける点も、ほぼ重なります。扉が引き戸か開き戸かの違いはあっても、閉め切って空気が動かないことは変わりません。奥の壁と床の隅から見てください。
表面処理では戻らないとき
次のどれかに当てはまるなら、押入れの中だけを掃除しても解決しません。
- 壁紙が浮いている、押すと下地が柔らかい
- エタノールで取っても、短い期間で同じ場所に同じ形で出る
- カビが広い範囲に広がっている
このとき湿気の出どころは押入れの外にあります。壁の中の結露、床下からの湿気、雨漏り。押入れは結果が見えているだけの場所です。
自分でできるのは、いつどこに出たかを写真で残しておくところまでです。あとはハウスクリーニングの防カビ施工か、建物側の点検を頼むことになります。賃貸なら、自費で処置する前に管理会社へ連絡してください。建物の不具合が原因なら費用の負担先が変わります。
- 押入れの中でいちばん冷たい奥の壁と床の隅からぬれる。手前だけ拭いても戻る
- 夏は温度・湿度・栄養がそろう。湿度60%を超えると活発に。手を入れられるのは湿度だけ
- 塩素系は持ち込まない。乾いたまま触らず、固く絞った布でふき取ってからエタノール。アルコールでも壁紙が変色することがあるので、目立たない所で試す
- 出した布団・段ボール・革製品にも移っている。戻す前に確認する
- 壁紙の浮き、すぐの再発、広い範囲。どれかならプロか建物側の点検へ

