引越し清掃

その退去費用、どこまで払う?

賃貸物件の退去時に高額な請求を受け、支払うべきか迷う人は多いです。普通に生活して生じた傷みや汚れの修繕費は家賃に含まれるため、経年変化や通常損耗にあたる退去費用は原則として払う必要がありません。ただし手入れ不足の汚れや契約書の特約によっては借主負担になるため、正しい境界線を見極めることが大切です。

先に結論
  • 通常の生活で生じる経年劣化や損耗の修繕費用は原則として貸主負担です
  • 日常的な掃除を行っていれば、特約がない限り退去時のハウスクリーニング代を借主が負担する義務はありません
  • クリーニング特約が有効になるには、金額の妥当性や合意など3つの要件を満たす必要があります
  • 納得できない請求が届いたときは、支払う前に内訳の明細を求めて照合します

通常の掃除と費用の境界線

掃除の範囲 借主は普段の掃除まで ごみをすべて処分する 床や棚の汚れを拭く 水回りの汚れを落とす レンジ回りの油汚れを取る 特約がなければ業者代は貸主負担

借主に求められるのは日常的な清掃です。通常の掃除を行っていれば、特約がない限り専門業者によるハウスクリーニング代は貸主負担になります。

通常の掃除を怠って油汚れや水あかを放置すると、手入れ不足として借主負担になります。特約がない限り、普段の掃除を行って明け渡せば専門業者の費用を支払う義務はありません。

経年劣化と借主負担の汚れの違い

原状回復は借りた当時の状態に戻すことではありません。時間の経過による自然な劣化(経年劣化)や通常の使い方による損耗(通常損耗)は、毎月の家賃に含まれます。

日光による畳やクロスの色あせ、家具の設置跡、冷蔵庫裏の電気ヤケ、通常の画びょうの穴は貸主負担です。一方、結露の放置によるカビやタバコのヤニ、引っ越し作業でつけた床の傷などは借主負担になります。

ヒント
クロスなどは年数が経つほど借主の負担割合が減ります。ただし掃除を怠った場合のハウスクリーニング代は経過年数を考慮しないため、年数で費用が減らない点に注意します。

特約が有効になる3つの要件

特約 3つそろって初めて有効 理由 必要があり暴利でない + 認識 負担を知っている + 合意 負担を受け入れる = 有効 特約が効く 明記も口頭の説明もなければ無効を主張できる

契約書にハウスクリーニング代は借主負担と書かれていても、必ず支払う義務があるわけではありません。通常の原状回復を超える負担を借主に課す特約は、次の3つの要件を満たして初めて有効になります。

借主が負担する範囲が契約書に明記されておらず、口頭での説明・合意も無い場合は、特約が無効だと主張できる余地があります。

高額請求への確認手順と早見表

請求額が高すぎると感じても、慌てて支払う必要はありません。国民生活センターへの原状回復の相談は2025年度に14,711件あり、相談の例として、立会い後の請求やルームクリーニング代の請求があります。次の手順で落ち着いて確認を進めます。

注意
実際の負担区分は賃貸借契約の内容や物件の状況によって異なります。自己判断だけで支払いを放置せず、契約書を手元に置いて消費生活センターなどの専門窓口に相談してください。

手元に届いた請求書の内訳がどちらの負担にあたるか、基準を一覧に整理しました。

あわBASEのまとめ

明細項目の負担区分早見表

国民生活センターに寄せられる相談の例と、ガイドラインの負担の区分を並べました。明細を受け取ったら、項目ごとにどの行に当たるかを見てください。

明細によくある項目ガイドラインの区分確かめること
専門業者によるハウスクリーニング借主が通常の掃除(ごみの撤去、掃き掃除・拭き掃除、水回り、換気扇やレンジ回りの油汚れの除去)をしていれば貸主負担特約があるか。特約が3つの要件を満たすか。入居時に「退去時は不要」と言われていないか
クロスの張り替え(日焼け・電気ヤケ・画びょうの穴)通常の損耗で貸主負担張り替えの理由が日照や家電の黒ずみではないか
クロスの張り替え(ヤニ・においの付着)借主負担になりうる経過年数で負担の割合が下がるので、入居年数が反映されているか
クロスの張り替え(ペットの傷と言われた)ペットによる傷・においは借主負担になりうる写真で、ペットが付けた傷かどうかを見せてもらう
床の傷家具の設置跡は貸主負担。引っ越し作業のひっかき傷は借主負担になりうる立会いで「問題なし」とされた傷を、後から請求されていないか
風呂・トイレ・洗面台の水あか、換気扇の油汚れ掃除を怠って汚れた場合は借主負担になりうる通常の掃除で落ちる程度か。クリーニングは経過年数を考えないので、年数で減らないことは知っておく

迷う項目は、ガイドラインの区分と契約書の特約のどちらが当てはまるかで決まります。特約が3つの要件を満たしていればそちら、満たしていなければガイドラインの区分を基準に話し合います。

明細を見るときは項目ごとに確認してみてね。通常の掃除をやっていたか特約があるかで負担の線引きが変わるから、見比べて落ち着いて判断しようね。

退去前の掃除と記録のポイント

退去の前 掃除して、立会いを記録 1 掃除する ごみを出し汚れを拭く 2 立会い 一緒に傷や汚れを見る 3 メモする 認めた所を書き残す 4 持ち帰る 疑問は合意しない

退去前の清掃と事前の記録を残すことが、余計なトラブルを防ぐ有効な手立てです。

ゴミの撤去や拭き掃除、水回りの手入れを行っておけば、手入れ不足を理由にした請求を防ぎやすくなります。日頃から油汚れや水あかをためず、通常の清掃を済ませて明け渡します。

退去立会いでは担当者と一緒に室内の傷や汚れを点検し、双方が認めた内容をメモに残します。立会いで問題なしとされた箇所を後から請求されていないかを証明する材料になります。疑問がある項目はその場で安易に合意せず、持ち帰って契約書や基準と照らし合わせます。

入居したときに室内の写真を残しておくと、元からあった傷かどうかの確認に役立つよ。手元の記録を揃えて、納得できる形で話し合おうね。

自力で掃除を行って手入れ不足を防ぎ、特約の条件を確認することが出費を抑える基本です。手元の明細書と契約書を照らし合わせ、適切な手順で確認を進めます。

よくある質問

退去時の掃除はどこまで義務ですか?

借主の義務はゴミの撤去や拭き掃除、水回りや換気扇の油汚れ除去といった日常的な手入れです。これらを行っていれば専門業者の費用は原則貸主負担ですが、放置した水あかや油汚れは借主負担になります。

特約があっても必ず払うべきですか?

必ずしも支払う必要はなく、特約が有効になるには合理的な理由や借主の認識、合意の意思表示が必要です。契約書に具体的な負担範囲が明記されておらず説明も受けていない場合は、無効を主張できる余地があります。

請求額が高すぎるときの対処法は?

まずは作業ごとの内訳が分かる明細を求め、通常損耗が含まれていないかガイドラインと照合します。納得できない点は貸主側と話し合い、解決しない場合は消費者ホットライン188へ相談します。

参考にした公式情報(4件)
  1. 国土交通省 「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」について
  2. 国土交通省 原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版) 第1章
  3. 国民生活センター 賃貸住宅の原状回復トラブル
  4. 消費者庁 消費者ホットライン